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「しまったなあ・・・」
一等宇宙航海士の山田直樹は、窓の外に流れていく星の瞬きを見つめながら、ため息ばかりついていた。ちなみにここは宇宙資源探索船うまい棒一号の船室である。

直樹はベッドから立ち上がり、ジャパンテラフォースというプリントが入ったツナギを脱ぎ始めた。胸元にあるジッパーを指でつまみ、へその辺りまで下ろすと、男らしい厚い胸板がお目見え・・・しなくて、代わりに柔らかそうな乳房がお出ましとなる。さらにツナギから足を抜き一糸まとわぬ姿になると、股間にぶら下がっているはずのモノが無く、そこには少し肉がはみ出た割れ目があった。

「・・・完全に女性化してる。声もだ」
鏡で自分の姿を見ると、男らしかった顔は丸みを帯びていて、ずいぶん可愛くなっている。おまけに百八十センチあった背も縮み、今はどう見ても百六十センチあるかないか。
ツナギがだぶつき、歩くたびに足がもつれてしまうような状態なのに胸元は窮屈で、尻の辺りもピチピチという有り様だった。
「まずいよなあ・・・」
宇宙資源探索船うまい棒一号は、男所帯の三十人編成。直樹を除いて皆、普通の成人男性である。しかも地球を離れて早や半年、船員たちは寄ると触ると女の話ばかりしており、はっきり言うと女に飢えているのだ。
実は今から一週間ほど前、うまい棒一号はモヘヘ星付近にあった小さな惑星に着陸し、資源の採掘を行っていた。名も無い惑星だったが、なんとそこには大気が存在し、生物もいくらかいたのである。とは言え、すべてあまり高い知能は持たず、進化の途中にあるような生物ばかりであったのだが──

「おっ、あそこにいる動物、ヒトにそっくりだな」
と、直樹が四つん這いで歩く動物を見て、ある悪戯心を起こしたのがいけなかった。
「警戒心は薄いな。特に凶暴でも無さそうだし。おや、こいつメスか・・・」
四本足で歩くヒトとでもいうべきか、かなりヒトに酷似した生物を見て、直樹の心ははやった。辺りには他の乗組員もおらず、ここいらには自分とこの生物だけ・・・そう思ったとき、直樹はツナギを脱ぎかけていた。

結局、未知の生物を直樹は犯してしまった。幸い、メスと思しきその生き物はヒトと同じ性器の構造を持ち、直樹をたっぷりと受け入れてくれたのだが・・・
「女になっちゃなあ・・・どうしたらよかんべか」
気がつけば体が女性化してしまったという訳である。船長はただちに直樹を部屋から出ぬよう指示し、第一級非常事態宣言を乗組員一同に発した。手早く言うと直樹を隔離したのである。

「つまんねえな。風呂でも入るか」
隔離されてそろそろ一週間。直樹はその間、誰とも会わずに過ごしている。他の乗組員は誰も女性化していないそうだから、原因はあの生物に違いないだろう。そうなれば直樹は他の誰とも接するべきではない。が、しかし──

「寂しいよなあ」
シャワーの飛まつを浴びながら、そんな事を思うのである。うまい棒一号の乗組員は皆、宇宙海軍学校の同期生ばかりで、船長はそこの教官だった。日本初の単独宇宙探索船という事もあり、うまい棒一号とその乗組員は家族同然の仲なのである。三十人全員、顔と名前が一致するほど親しいのだ。なので、直樹は自業自得とはいえ、ただ一人、疎外された今の状況が悲しくて仕方が無い。

「それにしても、女って・・・柔らかい体なんだなあ・・・」
石鹸を体にまぶした直樹は、瑞々しくきめ細かい肌を指で押してみた。柔らかいのに弾力があり、やはり男の時とはぜんぜん違う。
「おっぱいも揉むのは好きだったが、いざ自分の胸にあると重たくてかなわんな。チンポコがなくなると何か収まりが悪いし・・・」
髪を洗うと毛が妙に細くなっている事に気がついた。微妙な事だが、何もかも男と女は違うと、あらためて思い知らされる直樹であった。

「ん?部屋に誰かいるぞ」
風呂から出た直樹は、部屋に誰かが居る事に気がついた。乗組員のツナギを着ているので、仲間だという事は分かるが、はたして一体、誰なのだろうかと目を凝らしていると、当の本人が勝手にこちらへ振り向いてくれた。

「おっ、風呂入ってたのか。すまんすまん」
そう言いながら笑うその人物は直樹の親友、乙川昭彦だった。彼はレーダー技師で、航海士の直樹とはツーカーの間柄である。
「昭彦か!どうしたんだ?俺は今、隔離中の身だぞ」
「空気感染の心配は無いんだろ?平気だよ。それより、土産を持ってきた」
昭彦は食堂からがめてきたというビールとつまみを持っていた。

「もっと早く来たかったんだが、船長がうるさくてな」
「いや、来てくれてうれしいよ。寂しくて死にそうだったんだ」
ビールも嬉しいが、何より心の通った会話が嬉しくて直樹はあやうく落涙しそうになった。
友達ってありがたい。友情って素晴らしい。そんな思いで心が一杯になる。
「座れよ、昭彦。さっそく、飲もうぜ」
「ああ、それはいいが・・・その前に、何か着たらどうだ?目のやり場に困るぜ」
風呂上りの直樹は体に巻いたバスタオル一枚という姿。前述した通り、たとえ親友とは言えども女に飢えた乗組員には目の毒である。

「実は服のサイズが全部、合わなくなってさ。風呂上りはいつもこうなんだ」
いきなり女性になったので、直樹は衣服に困っていた。何せ身長は二十センチも縮み、バストはトップとアンダーの差が激しくなったのである。腰も細くなり、その分、ヒップが育ってしまったので、何もかもが今の体に合わないのだ。

「まあ、男所帯だからな。そう思って、乗組員一同から差し入れ預かってきた」
昭彦は何やら小さな箱を取り出し、直樹の前に差し出した。
「なんだ、これ?」
「開けてみろよ。守保係の連中の手作りだって言ってた」
箱を開けると中には女物の下着セット、すなわちブラジャーとショーツが入っているではないか。直樹はそれを手に取ると、苦心して作ってくれた守保係の仲間に感謝した。

「ありがたい。ノーブラじゃ胸が揺れて、困ってたんだ。ブリーフはケツがキツくて駄目なんだよ。ちゃんと、尻の部分を緩めに作ってある・・・」
「守保の粕谷、あいつの実家、シュリンプっていう女物の下着メーカー屋らしいぜ。そのおかげでブラジャーもパンティも型紙無しで作れるってよ。器用なやつだ」
「粕谷か。たかだか一週間、会ってないだけでずいぶん懐かしく感じる・・・俺に代わって、お礼を言っといてくれないか、昭彦」
「水臭い事、言うなよ。仲間じゃないか」
仲間、なんて良い響きだろう。直樹はあらためて友情の篤さに感謝するのであった。

「ところでブラジャーって、どうやって着けるんだろうな」
ストラップの部分を指でつまみながら、直樹が首を傾げた。これを着けている女性とは幾度も夜を共にしたが、自分が身に着けた事はない。

「紐を肩に通すんじゃなかったか?」
「悪いけど手伝ってくれよ、昭彦」
ビールをちびちびやりながら、二人はああでもないこうでもないとブラジャーに翻弄されはじめた。
「カップに手を添えていないと、ずれるな。昭彦、ホックを止めてくれないか」
「よしきた」
直樹は気持ち前かがみになり、たっぷりとした乳房にカップをあて、背中のホックを昭彦に止めさせた。そしてストラップを手繰って、形を整えると何とかなったのである。

「うん、いい感じ!乳揺れが収まった!」
「パンティは自分で穿けるな」
「ああ」
直樹は昭彦の前で堂々とショーツに足を通した。普段、男所帯で隠すものが何も無いため、他人の視線が気にならないのである。しかし今、直樹は可愛い女性になっている。
おまけに二人は飲酒中で、理性のタガが外れやすくなっている状態。何やら不穏な空気が部屋の中に満ち始めた。

「穿けた。なんだか落ち着いたよ」
「そうか、そうか」
ブラジャーとショーツを身に着けた直樹はくるりと身を躍らせ、一回転してみせた。胸は揺れるがブラジャーのおかげで収まりが良い。ショーツもぴたりと尻に密着しながら、きちんと余裕もあるので、今の直樹にはまさにあつらえたような感じだった。

「そうとなればビール、ビール・・・そういえば昭彦、地球まであとどれくらいで着くのかな」
「まだ全行程の半分だから、半年はあるぞ」
「それまでずっと、俺、女のままなのかな・・・」
「もしかしたら、一生かもしれんぞ」
「脅かすなよ。地球に帰れば、何とか対処法も見つかるさ」
宇宙を航行中のうまい棒一号内では無理だが、きっと地球に帰れば男に戻れると信じ、直樹はビールに口をつけた。

机の上にビールの空き缶が五つも転がると、徐々に昭彦の目が座り始めた。酒乱揃いという訳ではないが、うまい棒一号の乗組員は基本的に荒くれ者が多く、昭彦は酔った体を揺らしながら、とうとうと語り始めるのである。
「そもそも、お調子者のお前が悪い!妙な動物とやっちゃうからだ。ガハハ!」
直樹が女性化した事を詰り、嘲笑う昭彦。しかし、直樹だって負けてはいない。
「そんな事を言うがな、お前だってあの場にいればやったに決まってるよ」
「いいや。俺はやらない」
「やる!」
「やらない!」
二人はいつしか顔を突き合わせ、犬のように唸り声を上げていた。

「俺だってなあ、あの生物がこんな格好してなきゃ、やらなかったよ!」
直樹はベッドに這いつくばると、くねくねと尻を振って見せた。女の体に女物の下着を身に着けた直樹が、シーツの上に波を作って婀娜っぽい微笑をたゆませると、それまで饒舌だった昭彦が急に無口になった。目は完全に座り、ふっくらと丸みを帯びた直樹の尻に釘付けとなっている。

「いいケツしてるな、お前」
「ん?何言ってんだ、昭彦」
昭彦がすっと立ち上がり、ベッドへと迫る。股間を見ると男の形が浮かび上がっており、彼が今、興奮状態にある事を示していた。
「考えてみれば、今、俺は女と部屋に二人っきりなんだな。そうなりゃ、やる事はひとつだ」
「何、言ってるんだよ・・・俺は今、隔離中の身で・・・」
二人は会話が噛み合わないまま、ベッドの上に体を重ねた。直樹はたった今、着けたばかりのブラジャーとショーツに手をかけられ、じたばたと暴れ始める。

「よせ、昭彦!冷静になるんだ!」
「うるせえな。黙って足開けよ」
「あっ、あっ・・・やばいって!ああっ・・・」
女の体になった上に酔っていたので、直樹はたいした抗いも出来ぬまま、股間に異物を挿入されてしまった。昭彦は勃起した男根を直樹の胎内へ奥深く突き入れ、これでもかというほど激しく出し入れをした後、勝手気ままに子種を放出したのである。

半年後。種子島宇宙センターは、資源探索船うまい棒一号の帰還を喜ぶ人々の出迎えで沸いていた。何せ、日本初の宇宙探索という快挙を果たしたのである。国民の熱狂ぶりはさもありなんという感じであった。

「うまい棒一号が見えたぞ!」
銀色に光る船体の脇腹に、うまい棒一号という文字が見える。JAXAの発表では、乗組員も全員無事でただの一人も欠ける事無く帰って来たという。彼らは出遅れた感のある、日本の宇宙開発に偉大な足跡を残したと言えよう。
「うまい棒一号が着陸しました。さあ、大役を果たした勇気ある乗組員たちを拍手で出迎えましょう!」
この場には世界中から報道陣が集まり、帰還した乗組員たちを今か今かと待ち受けている。かくして船体のハッチが開いた。そして──

「乗組員一同、ただいま帰りましたわ」
まず、ミニスカート姿の女性がずいっと前に出た。胸元には大佐の階級章が光っており、彼女が艦長である事を示している。次いで、
「一等航海士、山田直樹。えー、恥ずかしながら、帰って来ちゃいましたあ」
ぴょこん、と飛び出したのは、あの直樹である。彼は、いや彼女もむっちりとした太ももが丸見えになるほどの短いスカート姿で、胸元は手作りらしきチューブトップで決めていた。

「乙川昭彦・・・すみません、帰って来ちゃって・・・」
その後も次々と現れる乗組員は皆、うら若き乙女の姿となっていた。それを見たJAXAの関係者、ならびに乗組員の家族親類、はては報道陣までがあんぐりと口を開けて、放心してしまう。

「おい、衛星の回線を切れ!放送事故だ!」
某国営放送のスタッフがまず、中継から一面のお花畑に画像を切り替えた。民放各局もそれに倣い、一斉にしばらくお待ちくださいのメッセージを出す。だが海外のマスコミ陣は面白いという理由でカメラを回し続けた。
「艦長、何があったんだ!これはどういう事だ!」
JAXAの責任者が艦長に詰め寄ると、
「じ、実は、粘膜感染する女性化ウイルスが艦内に蔓延いたしまして、乗組員三十名すべてが汚染されました」
「粘膜感染?そ・・・それって、もしや・・・」
「はあ。艦内で風紀が乱れまして・・・」
察する所、直樹に端を発した女性化騒動は昭彦が媒介し、その後、艦内中に広がったという事だろうか。それにしても、三十名全員が女性化するとは、あまりにも不甲斐ない。と言うか、情け無い。

「前代未聞の珍事だ・・・国辱ものだ・・・う~ん・・・」
責任者が泡を吹いて倒れた。結局、この不祥事によりJAXAは大幅に予算を削られ、日本はやはり宇宙開発に出遅れる事となったという。

 

 

 

 
二千五十年春、世界はまたもや戦争という大過の中にあった。各国が起こす資源の奪い合いに端を発した諍いが次第に大きくなり、更に資源を消費する大戦へと発展したのである。ちなみに日本は米国と手を組み、軍をロシアへ北上させていた。で、その最前線はというと・・・

「世はなべて事もなし、と、きたもんだ。ふああ・・・」
新日本軍第一歩兵部隊に所属する山田直志二等兵は、山の稜線に差し掛かった太陽を見て、あくびをした。あの辺りにはロシア兵が伏せているのだが、ここ数日、まともな撃ち合いはしていない。直志の記憶によれば、確か一週間ほど前にロシア軍の方から、カビた黒パンが一個、飛んできただけである。そのお返しに、日本軍は納豆を包んでいた藁苞を放り投げてやった。戦争というよりは、子供のケンカである。

実を言うと、この戦争は激しく資源不足だった。ご存知のとおり、戦争は大量の物資を短期間に消費する。もともとが資源不足で始まった戦争なので、どの国も弾薬や兵糧が足りないのである。そのおかげで両軍とも睨み合うだけで戦う事も無く、さりとて軍を引き上げる訳にもいかないので、何となくここに陣取っているのであった。

戦場に夜が来ると、見張りをしていた直志も兵舎に帰る事になる。省エネの戦いなので、夜は事実上、休戦となるのだ。
「ただいまー。うー、寒い」
「おう、山田。指揮官殿から、ラブコールが来てるぜ」
帰舎すると、同室の兵士が机を指差して、そんな事を言う。見ればそこには、一錠の薬が置いてあった。

「ちぇっ、またか」
直志は薬を手に取り、口の中へ放り込んだ。
「自分の体質を恨みな」
「腹立つなー。あの、オッサン」
ポリポリと薬を噛み砕いてすぐ、直志の体に変化が起きた。全体的に丸みを帯び、人相が変わっていくのである。しかも腰がきゅっと締まり、ヒップにむっちりと肉が乗る。更に驚くべきは、胸。なんと、男である直志の胸が、徐々に膨らんでいくではないか。

実はこれ、日本軍が開発した栄養補助剤・・・の筈だった。ナノテクを駆使し、前線にある兵士に起きがちな栄養不足を補うために、多種多様なビタミンや栄養素を詰め込んだ、お手軽健康食品なのである。だが服用の際、人によってはまれに体の代謝を促進する作用が起こり、予期しない様々な結果に及ぶ事があった。直志の場合は、体が女性化
するという珍事に発展したのである。

「ポリポリ・・・いい加減、こんな事してる場合じゃないんだけどな」
兵装を解き、裸になった直志は暖炉の前に立った。炎が女体に陰影を作り、男とは明らかに異なる曲線を浮かび上がらせている。

「色っぽいぜ、山田」
「よせやい・・・」
クロゼットに放り込んであった女物の服を取り出し、直志はそれらを身に着けた。まず、パンティを足に通し、腰まですっと引き上げる。お次はビスチェだ。引き締まった腰と、たっぷりとした乳房を支える重要なアイテムである。

「それは、指揮官殿の趣味かね」
「まあな。けったくそ悪いけどな」
娼婦でもない限り、通常はビスチェなどを着ける女はいない。要するに直志は、娼婦かそれ以下の扱いを受けているという事になる。
「悪いけど、ブラジャーのホック、かけてくれ」
「いいぜ。後ろ向けよ」
直志は髪をかきあげて、腕だけを通したブラジャーを同室の兵士に着けてくれと頼む。不思議な事に、女体化すると髪も急激に伸びるのである。手入れをしてないのでボサボサだが、中々、美しい黒髪であった。

「うッ」
直志がうめいた。背後から兵士が胸の膨らみを掴んでいた。
「柔らかくて、良い揉み心地だぜ」
「・・・やめろよ。この後、指揮官の所に行かなきゃ」
「少しくらい、いいじゃないか」
乳房を包む手は内から外へ円を描き、その頂点はごつい指で啄ばまれている。直志は苦悶とも喜びとも取れる、不思議な表情で喘いでいた。

「乳首が固くなってきたぞ」
「ううッ・・・」
「感じるんだな?指揮官殿に開発されたか」
「仕方・・・ないだろ」
「だったら、こういう事も出来るよな」

兵士が直志の髪を掴み、愛らしい顔を己の股間へと導く。
「しゃぶってくれよ。指揮官殿には、いつもやってるんだろう?」
「・・・」
直志はプイと横を向き、反抗的な態度を取った。
「そうか。無理強いがお好みか。それなら──」
兵士は直志を突き飛ばし、部屋の隅へ追いやった。そして今しがた身に着けたばかりの下着を剥ぎ、己はズボンのベルトを鳴らす。

「やめてくれ!指揮官殿に何て言われるか──」
「そんなの、知った事か」
女性化して丸みを帯びた体は、男の時のような力が出ない。兵士に圧し掛かられた直志は、あっという間に両足を開かれ、恥ずかしい場所をさらす事になってしまった。

「頼む、頼むよ・・・お願い」
泣きながら秘部を必死に手で隠す直志。もし今、犯されてしまうと、この後、会わなければならない指揮官に、何と言えば良いのか分からない。
「言う事を聞かないお前が悪いのさ」
「聞く、聞くから!」
「ちっ、最初からそう言ってりゃ、良かったんだ」

兵士は直志を抱き起こすと、落ちていたブラジャーで両手を後ろ手に縛り上げた。その上で、もう一度、己の前に傅くように命じる。
「心をこめてしゃぶれよ。ザーメンも飲むんだ」
その言葉に直志は黙って頷いた。
(うッ!しょっぱい・・・それに、臭い・・)
汗臭い兵士の男根は、やけに塩気が効いていた。臭いの元は恥垢だろう。直志はそれを舌でこそげ取るようにし、頬をすぼめてカリ首部分を集中的に扱いてやる。

「うう・・・いいぞ。さすが、指揮官殿に調教されてるだけはあるな」
淫らな口唇愛撫に震える兵士は、腰砕け気味になりながら呟いた。それほど、直志の舌技は冴えていた。

(ザーメンまで飲まなけりゃ、ならないのか・・・やだなあ・・)
男根をしゃぶりつつ、直志は考える。しかし、今はそれ以外に、この窮地を乗り切る術は無いように思えた。となれば、兵士の言う通りにしなければならないだろう。直志はせいぜい楽しんでくれと、半ばやけになっていた。

「おおう・・・で、出るぞ・・・ウッ!」
兵士がうめくと、直志は苦味を伴う粘液を飲む羽目になった。精飲は初めてではないが、お世辞にも美味いとは言えない物を飲むのは、あまり楽しいものではない。
(こっ、濃いなあ・・・)
鼻を通る青い性臭。直志は目を閉じて、それを味わった。不思議な事に、この臭いを嗅ぐと自分の女の部分が、かっと熱くなる。今、内股は閉じているが、その奥がジーンと疼くのだ。

「中に残ってるやつも吸うんだ。そう、そう・・・」
兵士に命ぜられるまでもなく、直志は尿道に残った精液も吸い取った。そしてすべての粘液を飲み干すと、ふっとため息をついて、
「・・・美味しかった」
と、漏らすのである。

同室の兵士に口唇愛撫を捧げた後、直志は士官用の兵舎を訪れた。ここには大隊長以下、上、下仕官が住んでいる。女性化した直志は、ここで一晩かけて慰み者となるのだ。まず、連隊の指揮官の部屋を訪ねるのがお決まりになっているので、直志はそのドアの前に立つ。

「山田です。入ります」
「遅かったな」
「薬の効果が中々、出なくて・・・申し訳ありません」
指揮官は田伏という、五十男である。国には妻子もいるが、好色を絵に描いたような男だった。

「ここへ来い」
田伏はベッドを手で叩き、直志を呼んだ。こうして、獣宴は幕を上げる。
「あまり時間がないんだ。手早く済まそう」
「はい」
直志は下着を奪われ、女性化した秘部に田伏の侵入を許した。大樹のような男根が胎内に埋められると、直志は我を忘れ腰を使い始めてしまう。

「うああッ!ひいッ・・・」
「いいのか、山田」
「いいッ・・・いいですッ・・・」
だらしなく開いた肉穴に男根が出入りする今が、永遠になればいい。直志は身悶えながら、そんな事を願った。

薬の効果は約十二時間。直志はその間に、何人もの士官の間を行き来し、夜中の二時を過ぎた頃には、もう五人目を相手にしていた。
「ふッ・・・ふああッ!」
「尻の力を抜け。裂けるぞ」
五人目はサドっ気のある男で、尻穴を巨大な男根で穿つ事を好む士官だった。直志はうつぶせになりながら、シーツの端を掴んで、懸命に肛姦の衝撃に耐えている。

(ここが、正念場だ・・・ううッ)
尻穴がぐっと開き、缶ジュースのような太さの男根に出入りされると、危うく気を失いそうになる。だがいくらかそれに慣れると、衝撃が甘い痺れに変わる。気がつけば直志は腰を前後させ、野太い男根をもっと欲しいとねだっていた。
「尻の穴が気持ち良いのか」
「・・・はい」
「いやらしいやつだ。じゃあ、もっと入れてやろう」

シーツを持つ直志の手に力がこもる。男根が根元まで入って来る。その一瞬を、直志は待ちわびていたのだ。
「根元まで飲み込みおった。貪欲な穴じゃ」
「ううッ!うッ・・・」
ジーンと腰骨が痺れてきた。最近の直志はこんな事でも、絶頂を得られるようになっている。
そして、波のような官能が近づいてきた。

翌日も直志は前線に立った。対面にはロシア軍もいるが、今日も何事も起こりそうにない。
「平和だねえ・・・」
最前線にあって不謹慎かもしれないが、少なくともこと戦争に関しては、何ら親展もないまま、日にちだけが過ぎていく事が嬉しい。とは言え、このまま娼婦のような生活が続くのも鬱陶しい。

だから直志は、また黒パンでも飛んでこないかと思った。もし、飛んできたら──
「・・・この薬を飲んで、女になって裸で向こうに投降してみよう」
と、ポケットに忍ばせたあの薬を握り締めながら、ぼんやりと山の稜線を見つめているのであった。

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